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短文力の極意「統一」その偉大な力を引き出す

短く的確に伝わるわかりやすい文章において、内容や文章の書き方だけではなく、スタイルの統一も重要です。

このように説くのは、企業向けにプレゼンやパワーポイントの資料に関するコンサルティングを行っているプレゼンマスターこと山田進一さん(株式会社オリファイ代表取締役社長)です。

山田さんは著書『短く伝える技術』 (フォレスト出版) で、 ビジネス文書はもちろん、プレゼンの資料においても、統一されたスタイルの文章はそれだけで短くてもわかりやすい文章になる 、と述べています。

今回は、統一するだけで短くても的確に文章がわかりやすくなる5つの極意を解説します。

極意①構成の統一

もし本屋に並んでいる本が種類別/内容別/形態別/出版社別/著者別という並べ方ではなく、すべての本がごちゃまぜに並べられていたとしたらどうでしょうか。

ビジネス書も小説も雑誌もマンガもすべて一緒に並べられていたとしたら、相当探しづらいと思いませんか?本の並べ方に規則性がないので、探したい本を見つけるために大変時間がかかります。

文章も一緒です。

文章の内容にしたがって部/章/節といった適切な単位に分けないと、非常に読みづらく理解しにくいものになります。

部/章/節といった単語は、普段なじみがないと思いますので解説します。

部:一番大きい単位、いくつかの章が集まったもの
章:部の次に大きい単位、いくつかの節が集まったもの
節:一番小さい単位、部がない場合は節だけでグルーピングもできる

特に部という単位は長い文章で、内容で分ける必要がなければ無理に使う必要はありません。また短い文章であれば、節だけでグルーピングします。具体的には、一見出し一節と理解するのがわかりやすいです。

それでは文章を内容にしたがって部/章/節といった適切な単位に分けるにはどのようにすればいいのでしょうか?具体的な方法としては次の通りです。

まずは、文章で伝えたい内容をすべて羅列します。

次に、読み手が理解しやすい順番に並び替えます。

最後に、内容に従ってグルーピングし部/章/節の単位にくくります。文章を書く前に、本で言うところの目次にあたる部分を書くイメージです。

極意②単語の統一

もしあなたが新しい部署に異動した際、そこでの見積書作成マニュアルがこんな風に書かれていたらどう思いますか?

『部門サーバーにある雛形を参考に見積書を作成し、お客様に提出した後で共有フォルダへ保存します。なお顧客データベースには見積書だけではなく関連書類もすべて保存されていますので、過去の情報を探す場合はファイルサーバーを検索すると便利です』

見積書の管理がなにやら複雑そうですね。見積書を作成するために「部門サーバー」「共有フォルダ」「顧客データベース」「ファイルサーバー」と4つの仕組みがバラバラに存在していて、それぞれ目的別に使い分ける必要があるように感じます。

しかし「部門サーバー」「共有フォルダ」「顧客データベース」「ファイルサーバー」の4つの単語がすべて同じものを表しているとしたらどうですか?もっと楽に理解できますよね。

例えば「部門サーバー」という単語に統一してみます。

『部門サーバーにある雛形を参考に見積書を作成し、お客様に提出した後で部門サーバーへ保存します。なお部門サーバーには見積書だけではなく関連書類もすべて保存されていますので、過去の情報を探す場合は部門サーバーを検索すると便利です』

これで内容がわかりやすくなったとともに、見積書作成の業務がイメージしやすくなりました。

同じ単語が何度も出てくるので、多少くどい感じを受けるかもしれませんが、短くても的確に伝えるためにはわかりやすさを優先するべきです。

極意③動作の統一

語の統一以外にも、同じような話で、動作の統一、というのがあります。

動作の統一、といってもあなたの普段の動作を統一する、ということではありませんよ。文章上に出てくる動作に関する表現、これを統一する、という話です。

例えばこんな文章。

『表示されているデータはダウンロードすることが可能です。データを加工して利用したい場合は自分のパソコンに保存して利用してください。なお大きなボリュームのデータは落とす時間が5分以上かかる場合がありますのでご注意ください』

同じ文章の中で「ダウンロードする」「保存する」「落とす」という表現が混在すると、読み手が混乱します。

この場合、

『表示されているデータはダウンロードすることが可能です。データを加工して利用したい場合は自分のパソコンにダウンロードして利用してください。なお大きなボリュームのデータはダウンロードする時間が5分以上かかる場合がありますのでご注意ください』

とするべきです。

もしかして、ダウンロードぐらいどんな表現でも誤解しないだろう、とあなたは思うかもしれません。しかし読み手は、書き手の想定していない文脈で理解する場合がしばしばあります。特に読み手が不特定多数の場合、誤解される可能性をできるだけ減らし、不要な混乱をさけるべきです。動作に関する表現を統一して、短くても誰がどのように読んでも誤解されないような文章にしましょう。

極意④文体の統一

礼儀正しいビジネスマンが、急に厳格な警官のような態度に豹変したらどう思いますか?心から信頼しようとはあまり思いませんよね。

文章でも同じです。

急に態度を豹変しては、読み手の心からの信頼は得がたいものとなります。しかし、文章で態度を豹変するとはいったいなんのことでしょうか?

例えば、

『全社会議が来週の水曜日に行われます。この会議は全社で経営戦略を共有するための非常に重要な会議である。なお会議冒頭から今年発表予定の新製品に関する説明も行われますので、遅刻欠席は厳禁である』

この文章を読んでどのように感じましたか?短い文章のなかで、書き手が態度をコロコロと変えている印象を受けませんでしたか?

このように「ですます調」と「である調」が混じっている文章は態度が豹変したように感じ、内容に対する信頼が低下します。

このような場合は、

『全社会議が来週の水曜日に行われます。この会議は全社で経営戦略を共有するための非常に重要な会議です。なお会議冒頭から今年発表予定の新製品に関する説明も行われますので、遅刻欠席を厳禁といたします』

文体を統一すれば、読み手は安心します。ですから「ですます調」か「である調」のどちらか一方に統一します。

どちらにしようか迷うようであれば、ビジネス文書やソーシャルメディアでの文章では「ですます調」をオススメします。

極意⑤書式の統一

いくらお金をかけたファッションであったとしても、組み合わせに統一感がないコーディネートは見苦しいとともに、人として信頼できない印象を人に与えます。

文章も同じで、見た目に統一感がないと読みづらいだけでなく内容の信頼性も損なわれます。特にパソコンを利用して文章を書く場合は、書式の設定が文章の見た目を決定します。

文章の書式は、次の2つの書式に気をつけるだけで簡単に整いますので、統一されているかどうか確認してください。

まず文字の書式として、フォント/文字の大きさ/色を統一します。

さらに、見出しの書式では先ほどのフォント/文字の大きさ/色の統一に加えて、項番・箇条書きの文頭記号/太文字・下線・斜体の有無を統一します。特に見出しの書式では、部/章/節のレベルに応じて使い分けると読み手にとってわかりやすい文章となります。

書式を一手間かけて統一するだけでグッと読みやすく文章全体の構成がわかりやすくなります。特に短い文章では統一する手間もたいしてかかりませんから、あなたもぜひ実践してくださいね。

まとめ :5つの極意

極意①構成の統一
文章の内容にしたがって部/章/節といった適切な単位に分ける

極意②単語の統一
単語を統一すればスッキリ読める

極意③動作の統一
動作を統一すれば誤解は生じない

極意④文体の統一
「ですます調」「である調」のどちらかに文体を統一する

極意⑤書式の統一
フォントや文字の大きさ、文頭記号、太文字・下線・斜体の有無など書式を統一する

今回取り上げた書籍

短く伝える技術
出版社:フォレスト出版
著者:山田進一

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