効果的なプレゼンをするためには、聞き手に対する深い理解が重要です。話す側は、これも話したい、あれも話したいと、自分の都合だけで話す内容を決めてしまいがちですが、これでは効果的なプレゼンは期待できません。
このように説くのは、企業向けにプレゼンやパワーポイントの資料に関するコンサルティングを行っているプレゼンマスターこと山田進一さん(株式会社オリファイ代表取締役社長)です。
山田さんは著書『口ベタでも人を動かす魔法のプレゼン』 (あさ出版) で、同じ商品・サービスでも聞き手によって話すべき内容がまるっきり異なるのだから、まずは聞き手を深く理解することが効果的なプレゼンの第一歩、と述べています。
今回は、効果的なプレゼンのために相手を深く理解するためのテクニックをいくつか紹介しましょう。
こんな時、あなたならどう考えますか?
たとえば、あなたが旅行代理店の窓口担当者だとします。
やってきた若いカップルのお客様に、こう聞かれたとしたらどう思いますか?
「ハワイ旅行を考えているのですが、どんなプランがおすすめですか?」
(今回のお客様は若いカップルか)
あなたはそう思って、ロマンティックな景色のホテルに泊まり、スキューバダイビングなどのレジャーを楽しみ、ブランド品のショッピングもできるといったプランをおすすめするかもしれません。
目に入るものだけが全てとは限りません
しかし、ハワイに行くのが目の前の若いカップルではなく、そのカップルが両親の退職祝いにハワイ旅行をプレゼントしようと考えているならどうですか?
何でも相談できるツアーガイドがついて、歩き回らなくても楽しめる美味しいヘルシーなレストランが入っているホテルに泊まり、レジャーよりもゆっくり観光地をめぐるプランのほうがおすすめしやすいでしょう。
そして、プランを考えるうえでは、両親の年齢や、持病なども気になりますよね?
相手によってすすめるものは変わるのです。
実は、この考え方はプレゼンも一緒です。
聞き手を深く理解するためのテクニック
目の前に座っている聞き手の興味は何か、現状はどうなっているか、課題は何かなど、聞き手を深く理解する必要があります。
そして、そのために利用するのが「SCマップ」です。
「SCマップ」とはSix Circleマップの略で、六つの円を使った図のことです。
まず一つ目の円は、聞き手。これを中心に上下左右に顧客、競合、社内、パートナーをあらわす四つの円を配置します。そしてこれらすべてを囲む六つ目の円が環境です。
これら六つの円の情報を収集し、整理することで、聞き手のことを深く理解できるようになります。
たとえば、聞き手がIT企業の法人担当営業だとします。
中心の円
①聞き手
これは実際にプレゼンを聞く相手を指しますから、法人担当営業です。
営業といっても、入社間もない新人なのか、それともこの道10年のベテランなのか、はたまた最近中途入社した人なのかなどの情報も必要です。
そして、法人営業部門は、その会社でどれぐらい重要な部門なのか、その会社は業界でどんな立場にいるのか、強みは? 弱みは? このような情報も必要です。
中心を上下左右に取り囲む円
②顧客
このとき勘違いしやすいのですが、これはあなたにとってのお客様ではありません。聞き手にとってのお客様です。その法人担当営業にとって、お客様はどういった業種で、規模はどのくらいで、地区はどこなのかなどの情報が重要になります。
③競合
繰り返しになりますが、これもあなたにとっての競合ではなく、聞き手にとっての競合です。その法人営業部門にとっての競合会社はどこなのか? 具体的な社名を把握します。
④社内
聞き手が社内でどんな部署、役職者と関係があり、どう影響を受けるのかです。
営業部門であれば、プリセールス(営業担当者の支援)や技術営業といった、営業をサポートする部門と営業マネージャーが重要であり、ほかにはマーケティング部門や商品の企画開発部門、営業企画部門などが関係してきます。
⑤パートナー
聞き手にとってのパートナー、協力会社です。その法人営業部門が普段一緒に仕事をする会社はどこなのかや、発注する側なのか、受注する側なのかといった力関係も重要になってきます。
すべてを囲む円
⑥環境
これは、聞き手、顧客、競合、社内、パートナーのすべてに影響を与えている大きな要因です。現在のIT業界であれば、クラウド、SOA、RFIDといったものがあります。
このように①聞き手だけでなく、②顧客 ③競合 ④社内 ⑤パートナー ⑥環境といった六つの観点をまとめた「SCマップ」を利用して、聞き手のことを深く理解してくださいね。
今回取り上げた書籍
口ベタでも人を動かす 魔法のプレゼン
出版社:あさ出版
著者:山田進一